運命とか結婚とかを考察する。
15年以上前になるけど、初めてのお給料でBurberryのキーケースを購入した。市場にはあまりない紫色のツヤっとしたハートのコインケース。そこにジャラッと丈夫そうなチェーンがついていた。2万円位だったと思う。
その時のときめきは今でも忘れない。
それから15年、家や車、職場などライフスタイルの変化とともに、何個の鍵がぶら下がっただろうか。
途中、古くなったなとか、そろそろ新しいものが欲しいなとか、そういった気持ちを一切起こさせることなく、とてもナチュラルに、たくましく、私の生活に馴染んでいた。
今年に入ってようやく、そういえばそろそろ変え時かな、と気がついた。
替えるとしたら、また15年使えるかは分からないが、飽きない、壊れない、使いやすいものが良い。
また突然にときめく出会いをするのか、ときめきを探し続けて何年もたってしまうのか、妥協して適当なものに落ち着くのか。
運命の出会いとは。結婚とは。
似て非なるものなのか、似たようなものなのか。
今のわたくし。
すっかりご無沙汰。
時は初夏。
息子は4年生になり、私は新しいことを始めている。
去年は何だったんだろうというくらい、子育てや自分に対して悩みに悩んだ。がしかし、2月を過ぎたころからつきものが取れたかのように、くよくよしなくなった。
悩むことに飽きたという感覚かな。
今は前に進む時だし、思春期を前にして、穏やかにすごしていたい時期なのだ。
今仕事で新しいことに挑戦している。
人と人がつながっていく。
昔の自分が嫌いだったけど、その昔の自分が作ってきたご縁に救われている。
やるじゃん私。
風【辻井伸行】
うちの近くに、辻井伸行さんが来るというもんだから急いでチケットを取った。
盲目のピアニストという事で有名になったこの方、幅広くファンがいらっしゃり、人気のチケットはどうやら最後の1枚だったようで、「超ラッキー」であった。ホントは息子と行きたかったのだけど、1枚しか取れなかったのだから仕方ない。内緒で行き、事後報告したらズルイと怒られた。
それで生で聞いた感想は
「音がでかい。」
まずはなんだそのド素人みたいな感想は、と突っ込みたい。
2階席の後ろの方だったけれども、ピアニッシモの繊細さも、フォルテで鳴らす速いパッセージも、すべてがクリアに、CDで聴いていたあの華やかな音色のまま届いてきた。
音数が多いとパワープレイになってしまったりして音が飛んでこず、遠くで聴いている印象になるピアニストもいるけど、辻井さんの音はどこまでも伸びてきた。
世界の大きなホールやコンチェルトでもぜんぜん負けないんだろうな。
そして世知辛いとか、人を恨むとか、仕事辞めたいとか、愛しすぎてとか、あの人がどうとか、どや?とか、そういう気持ちに溺れることはないのかなってくらい、暗さがどこにも見当たらなくて。まるで天使。
音のサイズ、明るくて美しい音色、だれにも阿らないストレートな表現。
どれも爽快だった。
感動したというより、なんかすごかったなぁ、と胸がすく思いで帰宅。
その日は、大胆に晩御飯を作った。
9歳になりまして。
この1年は学校でのトラブルや、人との付き合い方、色んなことを親子で話し合った。
私の話を聞くだけでなく、自分の意見もしっかり話してくれて。
もともと口下手な親子であるが、それゆえに私自身が悔しい思いをしてきたので、日ごろから「手を出すべからず、自分の考えは言葉にして伝えよ!」と育ててきた。だから昔は黙り込んだり物に当たったりしていたのが、怒りながら泣きながら私に意見を言ってきたときは嬉しかったし頼もしかった。
今後もしっかり話し合いのできる関係でいたいので、押し付けないよう、恐怖でコントロールしないように気を付けていきたい。(2人暮らしだし、完璧主義だし、私はでかいし偉そうだから。)
9歳になり、甘えや自立の狭間で、大人の階段をのぼったりおりたり。
優しさと、「自分は自分」という人と違ったセンスだったりペースを持つ素敵な子。
ギャンブル依存症の父親と、ゲッターズ飯田によるとデキ婚の星を持つ息子。
今年からお金の勉強と性教育を少しずつ始めていく予定。
大人【東京交響楽団】
高校の時、部室にあったCDを借りて(いつか絶対に生で聴きたいナ)と擦り切れるほど聴いたブラームスの交響曲第1番。
ブラームスなんてなんで好きだったかなという20代を超えて、今日がっつり17年分の鳥肌を立ててきた。
分厚いフルオーケストラのサウンドや、力強く端正なブラームスのソレが、思わず震えるほどかっこよくて。
大人の本気を感じた。
そうそう、これが好きだったんだ
どこかに埋もれていた純粋な女子高生の感性が、芋づるのように自分の中から出てくるようだった。当時の私のセンスなかなか渋めである。
拍手とともに会場から聞こえる声にならないため息、感嘆のうねりがこの演奏会が素晴らしかった事を裏付けていたように思う。
興奮さめぬまま、帰りに立ち寄った異国料理がどれもこれも美味しかった。よく分からないお料理に挑戦してみたり、存分にお喋りも楽しめたのがまた嬉しくて。こんなご時世にちょっとした旅に出られたような気分だった。
素敵なおまけの時間がより今日の思い出を強くしてくれた。
2022年もう思い残すことない!と心から思えるほど満足できたので、今年はきっと何があっても大丈夫。
パワースポット【上原ひろみ】
昨年の暮れ、と書くと随分前のようだけど、つい3週間前に上原ひろみ氏のコンサートへ行ってきた。
オーチャードホールは音響もよく広くて立派な箱なのだけど、感染対策がゆえ、座席は一つ置きに用意されていた。両隣に誰もおらずそれがまた贅沢で。
一生懸命聴いた。一音も逃すまいと一生懸命聴いた。
雫のように落ちていく音の動き、輝き、駆け上がっていくスケール。美しくて熱くてキラキラしていて。
今この瞬間にこの空間に入れることが幸せで、なんども終わらないでほしいと祈った。
彼女の話す言葉も今の私には温かすぎて。
音も想いも会場にいるすべての人にしっとりと寄り添っていた。会場が飲み込まれていくのが目に見えるようで、最後は私も周りの人と一緒に初めてスタンディングオベーションをしてみた。
全ての神経を使って聴いていたので終わったとしばらく放心。
楽しかったな。とんでもなく。
いつだったか私の師匠が、屋久杉とか太陽のように触れると幸せになる、元気がでる音楽家になりたいんだよね~と言っていたのだけども、まさに。世界遺産。
パワーをもらった。いやされた。色んなことを忘れていた、ということを思い出して、周りの人に感謝したくなったし、自分を取り戻した気がするし、いつも前を向こうと思った。
帰りは混雑した年末の渋谷を早歩きで通り抜け、最寄り駅で豚骨ラーメンを食べて帰った。あぁ、わたし今とてつもなく興奮してる。エネルギーが漲ってる。
楽しかったな。とてつもなく。